Madam_toad’s blog

カエルを材料に進化生態学の研究をしている変わり者の独り言です。

ユキ江さん月命日によせて。

ニホンヒキガエルBufo japonicus japonicus)のユキ江さんが先月の今日、お亡くなりになった。

1年1ヶ月しか一緒に暮らせなかった。

彼女は、とても大きな個体で、いくつだか正確な年齢は分からないが、

立派な大人の女性だった(プロフ写真で私が頭に載せているのも、彼女である)。

 

ヒキガエルは私の知る限り、どうやら雄より雌の方が性格がaggressiveだ。

好奇心旺盛で、行動範囲も広く、私への警戒心も薄い。

なつく、というわけではないが、確実に私の顔や声を覚え、餌くれんの?て顔で、積極的に近寄ってきたりする。

非常に、賢い(と思う)。

カエル合戦だけ見ていると、雄の方がaggressiveに思いがちだが、実際は–雌雄10匹以上数年にわたり共同生活を通し密に観察してきた個人の感想でいうと–雄の方がずっと臆病で神経質で、反対に雌は好奇心も冒険心も高く、餌の取り合いにも積極的な印象である。

私の指に食いついてくるのも、雌ばかりだ。

もともとヒキガエルでは性成熟の到達年齢が雌の方が1、2年遅いことから(一般的に性成熟は成長速度を緩める/初潮年齢の早い女性に小柄な人が多いのとだいたい同じ現象)、

体サイズは平均的に雌の方が大きい。

そのこともパーソナリティに影響してるのかもしれない。

 

 

ところで、ユキ江さんの死に方だが、

これがとても、印象に残る、衝撃的なものだった。

ユキ江さんは晩秋の頃は、300グラムを超えた大柄で、とても健康な個体だった。

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ただ、彼女には以前からきになる症状があり、足の指を貧乏ゆすりのように動かす癖があるのだ。

ヒトで言うところの、いわゆるチックのような。

自分でコントロールできていないのは明らかで、同居人のヨシ子さんは、彼女の動く足先を餌と間違え、食いついてしまう始末(これが起こると急いで口を離すが当然、ヨシ子に反省の色なし)。

このチック症のような動きが、秋から冬になる頃、指先だけから足の太もものあたりまで広がってきて、片足が水の中で勝手に揺れているといった、さすがに気になる症状になってきた。

大丈夫か何度も心配したが、どうやらこれは遺伝性らしい(これについては遺伝学的にも興味深

い知見なので、後々機会があったらまた取り上げたいと思う)。

 

そんなちょっと心配なユキ江さんだが、三月になりだいぶ暖かくなると、食欲が戻ってきたようだった。

それなのに、四月なかば、ある夜帰ると、両足をだらりと伸ばし、彼女は倒れていた。

体も脱水状態なのか、痩せており、(先週コオロギを数匹食べたばかりなのに?)緊急を要する事態なのは明らかだった。

私は意識が朦朧としてるユキ江さんを抱きかかえて、その夜はベッドに入れて、一緒に寝た。

朝になると少し回復したのか、戻りたそうにしてるので、ケージに戻し。様子を見ることにした。

 

それから二日後、夜また、彼女が倒れている。

なんというか、てんかん発作か、ひきつけ?というような、両手両足(正確には四肢)をビーーン!と伸ばし、顔もギューーーットなって、筋肉が硬直してしまって本人もどうしようも無い、という様子。

私は焦って、タオルを巻き体を摩った。大丈夫だよ、と声をかけながら。

暫くすると意識を取り戻したようで、その夜も枕元に寝かせて、一晩気をつけながら一緒に寝た。正直、朝まで持たないかな、と思っていた。

 

深夜に、一応意識を取り戻してるのがわかり、呼吸もしているようだったので、少しホッとして朝をまった。

何もできないので、とりあえずやせ細った体が心配になり、生理食塩水の水風呂に入れて様子をみた。少し水分を吸収したのか膨らんだように見えたが、同時に足の痙攣が始まってしまい、逆に辛そうな様子。

タライの中の彼女を他のカエルが意地悪しにくるのも困るので、再びタオルに包んで静かにベッドに静かに寝かせ、私は研究室に出かけた。

 

夜戻ると、相変わらず回復したとも言えない様子。

もう一度、水風呂に浸けてみる。

今度は朝よりも、吸収できてない様子。

そして、また発作。目を瞑って口をぐっと閉め、両手足がビーーーン!と硬直。

・・・抱き寄せてさすってあげる以外、何もできなかった。

 

それを最後に、彼女の意識が戻ることはなかった。

 

 

こうして、私はまた材料からペットにした貴重なヒキガエルを一人、失った。

 

ユキ江さんの冥福を祈るとともに、彼女が教えてくれたことを、自分は忘れない。

本当に、感謝してる。

 

ありがとう、ユキ江さん。